アカデミー賞作品賞を受けた映画「ハート・ロッカー」について、この意外な受賞が決まったことは速報のような形で、このブログでも報じました。
その後にこの映画についてもう一度、記事を書きました。
この映画は普通の意味の反戦映画ではないという点を強調しました。
その記事を紹介します。


2010年03月09日 産経新聞 東京朝刊 国際面

【ワシントン=
古森義久】
イラク戦争を主題とした映画「
ハート・ロッカー」が7日、超大作の「アバター」を退けて
アカデミー賞作品賞を受けたことは、写実に徹したこの映画の質とともに、米国民のイラク戦への屈折した思いをも反映したといえそうだ。
ハート・ロッカーとは文字どおりには「傷ついたロッカー」という意味だが、俗語では「激しい痛みの場所とかその期間」あるいは「棺おけ」という意味だという。
ビグロー監督によるこの映画は昨年7月に米国で封切られたが、限定された映画館だけでの上映で、当初は話題になることも少なかった。
それ以前に米軍の
イラク戦争を描く映画が4本ほど制作され、上映されたが、いずれも無残な不人気だった。
4本とも米国のイラクでの軍事活動を否定的に描き、反戦の政治スタンスを強く打ち出していた。
記者(古森)は「
ハート・ロッカー」を昨夏、見て、同じ
イラク戦争を描写しても、政治メッセージがなく、米陸軍の爆弾処理班の活動を批判も称賛も表さず、最後まで冷徹なタッチで追う点に引き込まれた。
その内容を本紙で昨年9月、いちはやく報じた。
映画ではバグダッド市街などに仕掛けられた爆弾を探知し、不発とする作戦が迫真のサスペンスで描かれる。
ときには爆弾は冷酷に炸裂(さくれつ)し、処理班の隊員を殺す。
爆弾と人間の戦いの描写からこの対テロ戦争の過酷な異色性が浮きぼりにされる。
しかし隊員の一部が復員後の米国社会で精神面の後遺症に苦しむ様子をちらりとみせる最後の部分は反戦とも取れる余韻を残していた。
そして「
ハート・ロッカー」は少しずつ話題の輪を広げていった。
興行成績では全米で20位前後となり、他の
イラク戦争映画には差をつけた。
アカデミー賞の選考過程では「アバター」と好対照をみせた。
制作費では2億3千万ドル対1100万ドル、興行成績では20億ドル対1600万ドルという差だった。
だが「
ハート・ロッカー」は「アバター」を破ったのだった。
受賞の理由をあまり読みすぎるのも危険だが、米軍のイラクでの命をかけた戦いを過ちとして切り捨てることなく、綿密に追うというスタンスが米国民の多くには魅力だったのだろう。
ビグロー監督は女性としての初の監督賞とともに最高作品賞を得て、壇上では黄金立像のオスカーを高く掲げ、「まずこの賞を米軍将兵の男女にささげます」と叫んだのが印象的だった。

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by 小野まさ
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