7月2日の朝日新聞の社説「さあ参院選へ」のなかに次の一節がありました。
「この9カ月の安倍政治をよしとするのか。待ったをかけて小沢民主党など野党に期待を託すのか。有権者に問われるものは重い」
参議院は当然ながら衆議院からは独立し、しかも衆議院より権限の弱い立法府の第二院です。しかし朝日新聞はこの参議院の選挙を安倍政権への事実上の信任投票として特徴づけることに必死です。いうまでもなく安倍首相が長となる自民党は衆議院で3分の2近くの議席を占め、国民の自民党への支持の大きさがつい最近の総選挙で明示されたばかりです。
選挙にからむ政治報道をみても、朝日新聞は安倍政権が取り組む憲法改正や公務員制度改革(天下り規制)さらには一連の外交活動(中国や韓国との関係改善、インドやオーストラリア、NATOなどへの新たな接近など)はいずれも、ほとんど無視しています。
朝日新聞7月5日朝刊の記事の見出しを以下に書きます。
「年金選挙 信任争い」「政権側に不利な構図」
7月6日朝刊には以下の見出しが躍りました。
「首相、参院選へ躍起」「年金幕引き図る」「完全解決メドなし」「業者織り込み済み」
要するに、年金問題の混乱も安倍政権のせいだという構図を描くわけです。しかし現実には年金問題が一朝にして生じたわけではないことは明白であり、その責任の多くが民主党ときずなの深い自治労にあることも周知となりました。朝日新聞はそのへんは追及しないのです。
日本社会の所得などの「格差」を誇張して伝え、安倍政権の責任に帰そうとする朝日新聞の態度も、顕著です。この部分のキャンペ-ンはゆがめ報道の典型例として、日本ジャーナリズム史に残るでしょう。その極端さは倒閣のためのプロパガンダという言葉を思わせます。具体例として、いくつかの参院選がらみの記事の見出しを紹介しましょう。
「格差 立ちすくむ政治」「参院選迷走の行方」「構造改革 危うい両輪」(7月2日)
「07参院選 広がる格差 埋める策は」(7月7日)
どこの社会にも、いつの時代にも、人間多数の間の格差は存在します。日本社会の所得の格差がたとえ広がっていても、安倍政権になっての9カ月間にそれが急に起きたとは、朝日でもさすがに証明はできないでしょう。
私が朝日新聞のこの部分をひどいプロパガンダだと感じたのは7月8日朝刊2面の大きなグラビア記事でした。
「格差の6年」という大きな見出しは小泉政権以来の年月を指すのでしょうが、そのホコ先は明らかに安倍政権に向けられています。そして4枚の写真、「アルバイト」という題の写真は東京の山谷の2畳半の部屋で暮らす若者の淋しい姿、「進む高齢化」という題の写真は能登半島の地震で自宅を失った高齢者の、これまた淋しい姿、「タクシー業」とか「産科医不足」という題の写真も同様に日本社会の抱えるトラブルを画像で、情緒的に訴え、安倍政権のせい扱いにしていました。
これでは、カラスの黒いのも、電信柱が高いのも、みんな安倍晋三が悪いから、なんてなっちゃいそうですね。
さらに偏向が明白なのは、朝日新聞自身が毎週、実施している世論調査結果の記事の見出しです。
「民主26% 自民22%」(7月9日)という見出しの記事の本文を読むと、安倍内閣の支持率が前回の28%から31%へ、3ポイントも上がったことが記されています。その「支持率上昇」は見出しにはまったく反映されません。
「自民、04年より逆風」「『年金選挙』1カ月前」「本社連続調査」(7月5日)という見出しの世論調査記事を読み、調査の数字をみると、なんと民主党への今回の支持率は毎週、どんどん下がっているのです。そんな部分は見出しからまったく連想できません。
「自民離れ 4人に1人」「05年郵政選挙→参院選」(7月8日)という一面トップ記事は、朝日新聞と東京大学の共同の世論調査結果を報じた記事でした。
これまた小泉政権下のいろいろな意味で異例の、自民党が歴史的大勝を果たした衆議院選挙と、その2年後の参議院選挙とを並列において、「歴史的大勝」の際の自民党支持者よりも今回、自民党支持を表明した人の数が少ないからと、その部分をオニの首でも取ったように大報道する姿勢は子供じみていると感じました。そこには、とにかく安倍首相の人気が落ちていると報じたい、切ないまでの政治的願望があらわでした。


by amber0921
「中国と日本は一つの国に」