すでに広範に報道されたように、オバマ大統領はアメリカの軍事新戦略を1月5日に発表しました。その基本は国防費の削減の展望を踏まえ、これまでイラクやアフガニスタンに重点投入していた米軍戦力の比重をアジア・太平洋地域に移すという方針です。その最大の理由は中国の大軍拡だとされています。
しかしこの新方針に対して、ワシントン・ポストが1月6日付の社説で正面から反対を唱えました。深刻な懸念を表明し、このオバマ戦略は危険だと警鐘を鳴らしたのです。
ワシントン・ポストは従来、民主党寄りの、オバマ政権に対しても、共鳴の立場をとることの多い主要新聞です。そのオバマ政権寄りの大手紙が社説で「オバマ大統領の防衛戦略は根拠薄弱な前提に依存している」とはっきり反対を打ち出したのです。
日本側ではこのオバマ新戦略には歓迎の反応が多いようです。中国の軍事脅威の増大に対応するという基本は日本として歓迎というのはいわば当然でしょう。しかしこの新戦略には、それだけではすまされない危険な部分が多々あるのだと、この社説は指摘するのです。
その社説の主要点は以下のとおりです。
▽これまでのアメリカの歴代の数政権が混迷を続ける中東からアジアへの戦略重点のシフトを試みたが、いずれも中東での戦争、テロ、同盟国への危機、石油資源保護の必要性などに迫られ、その狙いを果たせることができなかった。
▽オバマ政権は「米国が対テロ闘争や民主主義の国づくりのために軍事力を使う必要がもうなくなるだろう」という前提をとっているが、その前提はきわめて根拠が薄弱であり、危険でさえある。
▽イランや北朝鮮との戦争という可能性を排除ができず、米軍の地上戦力の大幅な削減はその点でも危険である。
▽アフガニスタンとパキスタンの軍事情勢も予断を許さず、「アジア太平洋重視」戦略での地上戦力の削減は危険を生むこととなる。
▽オバマ新戦略が予定どおりに実施されると、ベトナム戦争後や東西冷戦終結後の大規模な軍縮と同様の軍事力削減が起きると予測されるが、この二つの大規模軍縮はいずれも失敗だったとされている。
▽オバマ大統領はアジア太平洋重視戦略にともなう国防費の大幅削減への共和党側の反対に対し全面対決の姿勢をみせているが、妥協を許さないその姿勢は国家安全保障の観点からは無責任だろう。
▽オバマ大統領はかつてのアイゼンハワー大統領の「軍事費の額は国家事業全体のバランスのなかで決められるべきだ」という言葉をよく引用するが、当時の国防費はGDPの9%をも占めていた。現在はその半分以下の比率でしかないので、当時の状況を教訓のように引用することは不適切だ。
骨子は以上です。
要するに、アジアや太平洋に軍事の重点を移すという方針もその背景の最大の要因は国防費の画期的な削減だということです。
この社説はその削減で影響を受ける中東や欧州の安全保障になお心配は多い、というわけです。
アジアの視点だけからみず、全世界的な観点が必要だという論旨だといえましょう。


by yvb89326
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