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日本の憲法はアメリカが作ったーーケイディス会見から(11 最終回)

2007/08/30 10:55

 

日本の憲法の起草者チャールズ・ケイディス氏(元米軍大佐)のインタビュー記録の紹介を続けます。この回が通算で11回目、最終回となります。

この記録でいやというほど証されたのは、いまの日本の憲法がアメリカ占領当局によって最初から最後まで仕切られ、作られた、という単純な事実だといえましょう。

この基本は戦後62年目のいま憲法問題を考える際にきわめて重要な要因であることは言を待たないといえます。

以下がインタビュー記録の最終部分です。



ケイディス 国民投票にかけるという発言ですか。

古森 国民投票とそれから原子力エネルギーに関する発言です。

ケイディス ああ、あの原子力という言葉ね・・・・・・ホイットニー将軍は核攻撃をかけるという脅しをかけていたのではないのです。それよりも日本の指導者は憲法草案が国民投票にかけられるのを恐れていた、と私は思います。

古森 国民がGHQ案に賛成しただろうからですか。

ケイディス 国民は賛成したでしょう。GHQの草案は全体に、最終的に採用された日本憲法よりもやや過激でした。国民投票となれば、アメリカ製の文書がすべてそっくりそのまま、採用されることとなったのです。

 憲法起草に関してもうひとつ、おもしろく思い出すのは、白洲氏の、人をおどろかすやり方です。憲法草案を英語から日本語に翻訳する作業のため、日本側と徹夜で交渉を続けていた時、ミス・シロタが“こういう日本語では格式ばりすぎて、天皇がラジオを通じて話すのと同じような調子の皇室用語風なので、一般国民の大多数は理解できないでしょう”と発言しました。日本在住の長い他の通訳二人もこれに同意しました。私は日本語が全然わからないのだけれど、とにかく、“一般国民にもっとわかり易い日本語に訳すことはできないか”とみんなに提案しました。そこでまた最初にもどってすごく時間がかかる作業が始まりました。オックスフォード大学に留学した日本人の弁護士が集まって、言葉のひとつひとつについて訳を決めていくのです。ずっとそれが続き午前四時ごろになってもちっともメドがつかないので、私は責任者として“これではいつまでたっても終わらないから、なんとか早く仕上げる方法はないか”と問いただしました。

 そうしたら白洲氏がおもむろにポケットに手を入れて紙をとり出し“ケイディス大佐、あなたが作りあげたいというのはこれではないでしょうか”というのです。みると彼はGHQ憲法草案を一般国民にわかりやすい日本語に全訳したものを、持っているのです。会議のはじめから彼はそれを持っていながら、翻訳の過程でなにか日本側に有利な訳がでてこないかどうかなどを期待したため、黙っていたのでしょう。私たちはそのために何時間も浪費したのです。

古森 白洲氏が自分で訳したわけではないでしょう。

ケイディス 外務省の公式の翻訳です。一般国民にわかりやすい日本語になっていました。日本側はこれと、もうひとつ難解な日本語の訳と両方を準備していたのです。白洲氏はとても抜け目のない人物で、どうしてもそれを提出せざるえないという瞬間まで、黙っていたのです。

古森 白洲氏に関してはいろいろなエピソードがあるようですね。

ケイディス 彼にはちょっと信用をおけないところもありました。当時、彼は私のオフィスに毎朝やってきたものです。白洲氏はタバコをよく吸っていたので、私はPXの十セントほどのタバコをよくプレゼントしました。Pから支給されても私はタバコは吸わなかったからです。彼は朝、私のところへ来て“牛乳配達が牛乳ビンを回収に来ました”などといってその日の新しい情報を私から得ようとしたものです。私も秘密ではない情報をよく彼に知らせました。彼はそれを終戦連絡事務局とか首相とかに流していたのでしょう。

 その後、白洲氏は大きなパーティーを開く計画を立て、民生局のメンバーの全員を招待しました。芸者ハウスでの大パーティーで、民生局の百人近い全員が招かれました。しかし私は局次長として、将校がみんなで芸者パーティーに行けば、アメリカの新聞記者にきっとそれを書かれ、本国で批判をあびるだろうと考えて、そのパーティーに行くなという命令を将校全員に出したのです。その後、白洲氏は私の前に全然、顔を見せなくなりました。パーティーのことで気分を悪くし、きっと日本側に対しても面子を失う結果となったからでしょう。彼は民生局とのつながりを日本側に誇って語っていた形跡があり、きっと私のとった措置に憤慨したのでしょう。でも私としては禁止令を出さざるをえなかった。将校がもし多数、芸者ハウスに行って写真でも撮られたら、それこそ乱交パーティーのような感じに受けとられかねなかったのです。(笑い)

古森 それではどうも長い時間、貴重なお話をありがとうございました。

ケイディス いいえ、どれほどお役に立てたか・・・・・・。

(全記録終わり)

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コメント(25)

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2007/08/30 12:05

Commented by かわら屋「たいせい」 さん

 一連の貴重な情報、本当にありがとうございました。
 「こうであろう」と想像していたことがその通りであったり、また逆にそうでない場合もあったりと、目を見開かされる思いを感じました。
 当事者でなければ語ることの出来ない様々な事象、
 まさに「一次情報」の価値の大きさを、改めて感じることが出来ました。

 今後もご活躍楽しみにしています。

(旧記事ですが、TBを送らさせていただきます)

 
 

2007/08/30 12:14

Commented by kinny さん

これは、大変重要な記録だ。教えてくれて、ありがとう。
改憲を非難する者の中に、バカの一つ憶えのように「ポチ」を連発する昭和の亡霊たちがどれだけいることか...

小沢というイタコに呼び出されたせいか、また日教組を中心に亡霊がうごめきはじめているようだが、これでやがて、前時代的な妖術も終局に向かうだろう。

 
 

2007/08/30 12:55

Commented by weirdo31 さん

白洲氏がGHQ憲法草案を外務省に公式に翻訳させたもの、一つは一般国民にわかりやすい日本語に翻訳したもの、もうひとつは当時の憲法や法律で使われている文語訳と両方を準備していたというのは象徴的ですね。

ハーグ陸戦条約附属書「陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則」の第43条に、「国ノ権力ガ事実上占領者ノ手ニ移リタル上ハ、占領者ハ、絶対的ノ支障ナキ限リ、占領地ノ現行法律を尊重シテ、成ルベク公共ノ秩序及生活ヲ回復確保スル為施シ得ベキ一切ノ手段ヲ尽スベシ」と定められ、占領軍が占領地域の法律を尊重することを定めています。

占領軍による憲法制定はこの規定に反していることは明らかであり、その観点からも自主憲法の制定が論じられなければならないと信じます。「日本国憲法」が枢密顧問の諮詢及び帝国議会の議決を経て公布されたものであっても、それをもって正統性を論じることは出来ません。

 
 

2007/08/30 14:54

Commented by yashiki さん

簡単に言うとアメリカが作った法律案を日本が修正し、了承したという表現でもおかしくないのでしょうか?それとも他に言い回しがあるのでしょうか?

先日、知り合いにマスコミ関係者に、アメリカGHQ)が押し付けた法律ではないか?との問いに「何を馬鹿げたことを言ってる」と怒ってしまいました。

簡単に言えばどのように表現するのが適切でしょうか。

 
 

2007/08/30 15:58

Commented by weirdo31 さん

yashiki さん

>先日、知り合いにマスコミ関係者に、アメリカGHQ)が押し付けた法律ではないか?との問いに「何を馬鹿げたことを言ってる」と怒ってしまいました。

そのマスコミ関係者に「どこが馬鹿げているのですか」と訊かれたらいかがでしょう。

諸般の事情から了承せざるをえなかったというのがほんとのところでしょうか。

 
 

2007/08/30 17:01

Commented by staro さん

しかし....古森様がこの最終章を作成されたのは
恐らく<2007/08/30 10:55 >

で、早速、[眠り狂五郎]2007/08/30 12:28
とトラバされている
驚くべき政治活動である
いったい何をやって食っているのか?
今でもYahooには板張り付きの集団がいるが、こいつもそう仲間だろう
この異様な執拗さ
日本人ではないと思われる根拠がここにもあると感じる
慰安婦問題で謝罪させて得る物は何なのか?
やればやるほど嫌われる事がわかっていない
事実がどうかなどより、この異様な執拗さに国民は呆れるのだ

 
 

2007/08/30 18:07

Commented by ddff さん

けっきょく、間接的にしろ現在に至るまで、ただの一度も
国民が憲法の制定に関与させてもらえていないのですね。
日本では・・・・。

そして、今なお「日本国民」に憲法はいじらせないと力説
する人たちがいて、しかもその人たちが日本国籍の恩恵を
こうむっているという不思議の国、日本。

一体ゼンタイ今は何世紀なのでしょうか?

「ケイディス会見」勉強になりました。
もう一度、最初から読み直させていただきます。

 
 

2007/08/30 18:12

Commented by kinny さん

To staroさん
>事実がどうかなどより、この異様な執拗さに国民は呆れるのだ

ヒステリー患者にとってヒステリーは思想や考え方ではない。
朝日を浴びたら腹が減るのごとく、反日を行いたくなるのだ。

小生が第二主義、第三主義の講義をはじめたら、理解できずに10分で眠りに入るだろう(ちなみに一般の人は退屈のために10分で眠りに入るだろう)。
だから気分だけのエセリベ、エセ進歩なのだ。

 
 

2007/08/30 19:58

Commented by hippokampos さん

簡単に言えば、という問いが上にありましたが、「押しつけられ、押し戴いて60年」というのが一番簡単ではないでしょうか。

ミス・シロタはベアテ・シロタ、ピアニストのレオ・シロタの娘ですね。法律や憲法を専門にしていたわけでもない、二十二、三の小娘が日本語と英語が出来るというだけの理由で憲法草案の作成に参加し、その主張が権利条項でそれなりに日本国憲法に取れ入れられてしまった、というのは何とも情け無い話です。私などは暗澹としてしまい、いくさに負けるものでは無い、と思ってしまいますが、「ベアテの贈り物」などという映画を作って有難がっている人達もいるので、世の中は広いと思います。

 
 

2007/08/30 21:18

Commented by 12star さん

■昭和の快男子”白州次郎”
白州次郎はアメリカ本国には「従順ならざる唯一の日本人」として報告されていたようです。
彼は正確に時代を読む力、未来を展望した思考の出来る人でした。
「戦争に負けたけれども奴隷になったわけではない」と放ちそのビジョンを掲げ、権力に『屈しない心』を持って対等に渡りあった。
自分に誇りを持っていたからこそ出来た事だと思える。
日本で始めてジーンズとTシャツを着た彼はカッコイイと思います。
私はテレビで彼のドキュメンタリーを見てから、歴史が好きになり学ぶようになりました。彼のその後の生き様も、総理大臣だろうが、TOYOTAの社長だろうが、屈せずといった感じです。しかし多くの人に良い変化を与え、
新たなる出発の糸口を与え続けているようです。
私も彼のように「私はこうなんです。と胸を張って言える自分で有りたい」

 
 

2007/08/31 00:01

Commented by 古森義久 さん

かわら屋「たいせい」 さん
 
ケイディス氏の発言はいまも記録が私の手元にあり、一次資料であることは間違いありません。
ご本人は驚くほどの率直さで語ってくれたことがこちらの記憶に強く残っています。

 
 

2007/08/31 00:03

Commented by 古森義久 さん

kinnyさん

改憲論者の方がアメリカへの反抗を恐れない、ということになるのでしょうか。
アメリカ製の憲法は変えたほうがよいという意見は「親米ポチ」の意見ではないといえるでしょうね。

 
 

2007/08/31 00:06

Commented by 古森義久 さん

weirdo31 さん

ハーグ陸戦条約の規定は、おもしろいですね。
そのまま適用されば、日本を占領した米軍はその規定に違反ということになるわけですね。

 
 

2007/08/31 00:07

Commented by 古森義久 さん

yashiki さん

アメリカが作った日本憲法を日本がそのまま受け入れた」というのが正確であるような気がします。

 
 

2007/08/31 00:09

Commented by 古森義久 さん

staroさん

「眠り狂五郎」というのは、別名「眠れぬシーサー」
「あなた方日本人はーー」と書いていた人物ですね。

 
 

2007/08/31 00:11

Commented by 古森義久 さん

ddffさん

日本が中国に対し「中華人民共和国憲法は未来永劫、絶対に変えるな」と求めたら、どんなことになるかーーー

 
 

2007/08/31 00:13

Commented by 古森義久 さん

hippokampos さん


シロタという女性が果たした役割はケイディス氏によれば、明らかに、単なる資料集めの使い走りでした。
ところが何十年も経つと、いつのまにか「日本の憲法草案を書いた一人」としてヒロイン扱いですね。その美化映画なんて、ちゃんちゃらおかしいと、
私もずっと思っていました。

 
 

2007/08/31 00:15

Commented by 古森義久 さん

12starさん

白洲次郎という人は多様な側面を持った、屈折した人物だったようですね。

 
 

2007/08/31 00:17

Commented by iseheijiro さん

staroさん

眠り、、ね。そのうち討伐する。今は、孫に熱中する白髪の、ベアテ・シロタ・ゴードンさんはね、人格者ですよ。「ケイデイスさんから指導を受けて、フランス人権法・ソ連人権法で婦人憲章を学んだ」と言っていた。NYのジャパン・ソサイヱテイでも努力した親日家です。彼女のファンは日本の女性たちです。当然でしょうよ。ここの話しは婦人憲章改正ではないでしょう? 現行憲法には良いところもあるのですね。伊勢

 
 

2007/08/31 01:07

Commented by weirdo31 さん

古森さん

マイク;ホンダがほんとに日本人の血を引いたアメリカ人なら、まずおのれの国の過ち、すなわちハーグ陸戦条約に違反した民主党トルーマンの対日占領政策を非難反省謝罪する決議案を出すべきでした。

相手の目の中の塵はよくみえるが、おのれの目の中の梁に気がつかない…太平洋の両岸には大勢いるようですね。

 
 

2007/08/31 22:48

Commented by 12star さん

>白洲次郎という人は多様な側面を持った、屈折した人物だったようですね。

古森さんには屈折して見えましたか・・・

私には、驚くほど

”自分に一直線の人”

と見えました。

 
 

2007/09/01 22:48

Commented by hippokampos さん

To 古森義久さん
>
>シロタという女性が果たした役割はケイディス氏によれば、明らかに、単なる資料集めの使い走りでした。
>ところが何十年も経つと、いつのまにか「日本の憲法草案を書いた一人」としてヒロイン扱いですね。その美化映画なんて、ちゃんちゃらおかしいと、
>私もずっと思っていました。

ベアテの提案が取り入れられたという思い込みがありましたが、検証の必要はありますね。確かにケイディス氏の話では、資料集めの使い走り程度ですね。日本語の表現で多少は働いたようですが、今の憲法の日本語から見るとねえ。

 
 

2007/09/01 22:51

Commented by hippokampos さん

To iseheijiroさん
>今は、孫に熱中する白髪の、ベアテ・シロタ・ゴードンさんはね、人格者ですよ

ええ。チャーミングな女性だと思います。まだご健在なのですよね。問題は若き日の彼女が果たしたか、あるいは果たしたと言われる役割なのです。

 
 

2007/11/25 14:59

Commented by ogawayutaka さん

古森様

初めてお便り申し上げます。
ケイディス会見全11回、有難う御座います。
今11月25日なのですが、最初に遡ってワード文書にコピーしました。が、どうも一回目が見当たりません。日付は何時でしょう。
なお、日本国憲法起草に関心がある、アメリカ人(ハーバードL.S.の学生)に、英文を見せたいのですが、それを見ることは可能でしょうか。
ここの書き込みも見ておりますが、お手数ですが、電子メイルでご返信いただければ幸いです。

Y.O.

 
 

2007/11/25 23:44

Commented by 古森義久 さん

ogawayutaka さん

お返事します。
ケイディス会見の第一回目は確か、私のブログ操作ミスで削除してしまった記憶があります。
エントリーの最初の方でも書いたつもりですが、この記録は1982年に刊行された「憲法制定経過」(江藤淳編)に収録されています。内容は私がケイディス氏にインタビューした、ブログ掲載分と同じです。

なお英文のトランスクリプトは私の手元に保管してありますが、いまの時点でそれを特定の個人の方の要望に応じて提供するのも、いくつかの理由ではばかられます。ご了承ください。

 
 
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