<< 2008年10月
12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031

アメリカの首都での柔道(2)――なぜこれほど多彩な米国人が集まるのか。

2008/10/09 14:14

 

講道館の公式雑誌『柔道』の2008年9月号に掲載された私の記事の紹介を続けます。

 

        ======

 

さて「ワシントン柔道クラブ」の特色の一つは会員たちの多様性だといえる。

 

アメリカ社会の実にさまざまな職業分野や年齢の男女が集まってくる。

 

 全米レベルの試合でも活躍してきたメンバーでは、ロイ・イングラー五段は最高裁判所にかかる訴訟案件を専門に扱う弁護士、トム・カウフマン三段はコンピューター企業の幹部技師、アンドレアス・ブラント三段は救急医学専門の医師、ジム・スターニク三段は建築家、アービン・ブランドン二段は民間の警護スペシャリスト、女性ではフラン・バール五段が元国務省外交官、レイチェル・フリードリッヒ三段が国防総省の現職の幹部職員などなど、である。

 

 やはり首都地域ならではの社会とのつながりなのだ。

 

 段位を省略しての初段クラスや茶帯、青帯について述べるならば、首都地区で殺人事件専門の連邦検事だったマーク・キャロル、ジョージワシントン大学教授のエイモス・ゲルブ、ジョージタウン大学医学部の女性救急医のキャシー・クランシー、最高裁の女性書記官のアンジェラ・オンケン、アメリカン航空のパイロットのエリック・スミスといった職業人として活躍するアメリカ人男女が定期的に練習に出てくる。

 

こうした社会人、職業人が二十代から三十代、四十代はもちろん五十代以上でも参加して、自分なりのペースで稽古ができる点がこのクラブの特徴なのである。

 

日本人として柔道に励み、なおアメリカ社会に柔道以外で接する筆者としては、社会のこれほどの中枢で働く多彩なアメリカ人男女が日本で生まれ育った柔道をこれほど熱心に稽古し、後述するように日本の柔道リーダーシップへの敬意をこれほど表するという現実はなんともうれしく、誇りに感じてしまう。

 

職業にはもちろん貴賎はないとはいえ、アメリカの官民の枢要部分で機能するエリート・プロフェッショナルたちが、それぞれ個人ベースで長い年月、柔道の稽古を続けているという状況は、日本の柔道関係者たちにもぜひ知らせたいところである。

 

学生も多彩である。

 

地元のジョージタウン大学の新入生、医学生、ジョージワシントン大学の国際関係大学院生、アメリカン大学の法科大学院学生ら、もちろん男女混合、そして黒人の多い有名校ハワード大学の大学院で心理学と法律をそれぞれ学ぶティファニー・ポークとジャスティン・ポークの姉弟は人種の多様性を改めて印象づける。

 

ハイスクールの生徒たちも数人くる。

 

首都には全米各地から種々の研修のために夏休みだけ、あるいは一年間だけ、という期間でやってくる若者たちも多い。

 

アメリカの政府機関や議会、研究所でインターンなどの短期、中期の研修をするというような若者たちである。

 

そのなかにすでに柔道を知っている人たちがいて、ワシントン柔道クラブの評判を聞いたり、インターネットで発見して、入門してくる。

 

つい最近では西海岸のスタンフォード大学を卒業した目の不自由な青年が連邦貿易委員会というところで研修を受けるためにワシントンに一年間、滞在する間、当クラブで稽古をした。

 

視力の弱い彼には多くのメンバーが文字どおり手取り足取りで熱心に指導をした。

 

だが同クラブの最大の人材源はやはり当のジョージタウン大学そのものである。

 

新しい学年や学期の始めにはクラブ側が数百人の新規学生を対象にJUDOの宣伝のチラシを配り、クラブ入会を呼びかける。

 

その結果、いつも数十人が入門してくる。

 

三ヶ月ほどの期間の終わりには通ってこなくなる学生も多いが、そのまま次の学期に数人から十数人が残るというケースも珍しくない。

(つづく)

          =====  

 

 

カテゴリ: 世界から    フォルダ: 指定なし

コメント(13)  |  トラックバック(7)

 
このブログエントリのトラックバック用URL:

http://komoriy.iza.ne.jp/blog/trackback/747900

コメント(13)

コメントを書く場合はログインしてください。

 

2008/10/09 15:13

Commented by nihonhanihon さん

こんにちわ。
やはり3ヶ月続いた人はその後も残るのですね。
普遍的な定理なのでしょうか。

 
 

2008/10/10 02:40

Commented by 古森義久 さん

nihonhanihon さん

今学期もそろそろ二ヶ月ですが、今回、新たに柔道を始めて、いまも続けている学生は20人以上、昨夜も元気に練習をしていました。
私も練習をしてきましたが、その後の睡眠の深さが異なるのに、いまさらながら驚き、喜んでいます。

 
 

2008/10/10 02:41

Commented by 古森義久 さん

Cosplay さん

石井選手というのは柔道界でも変種中の変種のようです。
だからいくら強くても、早く出て行っておくれ、という声が強いのでしょう。

 
 

2008/10/10 03:31

Commented by nihonhanihon さん

To 古森義久さん

>今学期もそろそろ二ヶ月ですが、今回、新たに柔道を始めて、いまも続けている学生は20人以上、昨夜も元気に練習をしていました。
>私も練習をしてきましたが、その後の睡眠の深さが異なるのに、いまさらながら驚き、喜んでいます。

おお、それはよかったですね(両方の意味で)。

グッド・チューニングで、お仕事頑張ってください。

 
 

2008/10/10 09:54

Commented by izatoru さん

柔道は、欧米のキリスト教徒から見ると、異文化の雰囲気が漂っているのでしょうか。
キリスト教・イスラム教・ユダヤ教は、一神教で自然を制覇する思想が入っています。
しかし、日本の神道は自然と共存する思想が含まれており、柔道の相手の力に抵抗するのではなく、身を任せるような所があります。

 
 

2008/10/10 15:17

Commented by 古森義久 さん

Cosplay さん

こういうご意見は英語でよくfarfetched というみたいなんですけどね。

 
 

2008/10/10 15:22

Commented by 古森義久 さん

izatoru さん

よく質問してくれた、という実感です。

ワシントン柔道クラブではキリスト教、ユダヤ教、そしてイスラム教の信者までが熱心に練習をしているんです。

宗教と柔道がぶつかりあう唯一の実例は、私のこれまでの体験では信仰のすごく厚いイスラム教徒のなかに、稽古の相手に、あるいは嘉納師範の肖像に頭を下げることを拒む人がいることです。
頭を下げる相手はアラーの神だけだ、というわけです。
しかしイスラム教徒の中でもそういう人は超少数です。
「礼」の意味を説明すると、だいたいはみな理解して、了承します。

ですから柔道の普遍性というのは本当にすごいと思っています。

 
 

2008/10/10 20:19

Commented by izatoru さん

古森義久
>宗教と柔道がぶつかりあう唯一の実例は、私のこれまでの体験では信仰のすごく厚いイスラム教徒のなかに、稽古の相手に、あるいは嘉納師範の肖像に頭を下げることを拒む人がいることです。
>頭を下げる相手はアラーの神だけだ、というわけです。
>しかしイスラム教徒の中でもそういう人は超少数です。
>「礼」の意味を説明すると、だいたいはみな理解して、了承します。

お返事ありがとうございます。
アラビア語・ヘブライ語を少しだけ勉強した者として、頭を垂れるのを拒否したくなる気持ちが少し分かります。
柔道を通して、互いの宗教を理解し尊重しあえるようになれば、いいですね。

 
 

2008/10/11 01:23

Commented by butagorilla さん

古森様

 正直なところ、多くの年配の方々が柔道をなさるというのは驚きです。危なくないのでしょうか?腰や膝、肩などの関節を痛めたりしないのでしょうか?

 大きなお世話かもしれませんが、古森様もお体にはお気をつけてください。

 
 

2008/10/11 03:26

Commented by 古森義久 さん

butagorilla さん

ご懸念はごもっともです。

しかしワシントン柔道クラブでは、日本とは異なり、それぞれの水準や体力おに合わせて、無理をしないよう練習となるよう、指導者も会員自身も心がけています。
その効果があって、年齢の多い男女が楽しめる範囲で、練習をしています。

私自身も十二分に気をつけています。
長年、柔道をしていると、自分の体力や技術と、相手との比較がわりに客観的にできるようになり、この相手と真剣に練習すると、怪我をするかもしれないという警戒信号が自然に出るようになります。その信号は尊重するわけです。

 
 

2008/10/11 10:36

Commented by さくらの こころ さん

古森さん

横から失礼します。
>長年、柔道をしていると、自分の体力や技術と、相手との比較がわりに客観的にできるようになり… その信号は尊重するわけです。
 柔道のみならず「道」を極めた方は、冷静かつ客観的に自己評価ができ、驕ることなく、自分そして相手に向き合うことができるのだと思います。今の日本人に最も必要なことなのでは…。
田舎暮らしでは、なかなか息子らに習わす事も叶いません。

 
 

2008/10/11 15:12

Commented by 古森義久 さん

さくらの こころ さん

柔道に関しては冷静かつ客観的に自己評価ができるかもしれませんが、その他のことでは、自信ありません。

激することも多く、あてが外れることも多く、幸いにして、落ち込むことは、産経新聞記者になってからは、わりに少ないのですが、煩悩は絶えませんね。

 
 

2008/10/12 11:24

Commented by ガリガリ君 さん

古森義久さん
>Cosplay さん
>
>石井選手というのは柔道界でも変種中の変種のようです。
>だからいくら強くても、早く出て行っておくれ、という声が強いのでしょう。

横レス申し訳ございません。
わたくしが柔道について何の知識も持たないひとです。
古森さんはおっしゃる石井選手が変種云々の話ですが、技とかを指しますか?

純粋な好奇心から出る質問で他意がありませんので。

 
 
トラックバック(7)

2008/10/11 07:32

ブッシュは日本を見捨てた [花うさぎの「世界は腹黒い」]

 

花うさぎの世迷い言(2) ▽「日本はアングロサクソンと同盟を結んでいる時は良い時代、大陸や半島と関わっている時は酷い目にあっている」と保守系の言論人が良く指摘する。日本の近現代史を振り返ってみると、まあ…

 

2008/10/11 06:40

解散先送り-政府、世界同時株安に対応 [草莽崛起ーPRIDE OF JAPAN]

 

 10日のニューヨーク株式市場は取引開始直後から株価が急落。ダウ工業株30種平均の下げ幅は、一時、約700ドルに達し、8千ドルの�...

 

2008/10/10 20:44

地方議員が連携を取り揺るぎない国へ [草莽崛起ーPRIDE OF JAPAN]

 

皆様のご協力により本日1000万ヒットを記録しました。今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。 連載?32地方議会から「誇りある国づく�...

 

2008/10/10 06:13

わが国ノーベル受賞者の人生観 [草莽崛起ーPRIDE OF JAPAN]

 

 昨日、ノーベル化学賞の一人に下村脩・ボストン大名誉教授が選ばれるという吉報が入った。連日の日本人の受賞に列島中、一瞬、世界が明る�...

 

2008/10/10 04:28

中共の木馬(32)ー 隣国のトラップに注意せよ [何となくドライブ・バイ 覗き見]

 

What's Now? - 隣国のトラップに注意せよ

 

2008/10/09 20:22

知事宛てに学力テストの市町村別の結果について公開請求 [草莽崛起ーPRIDE OF JAPAN]

 

 先日の読売新聞によれば、学力テストの市町村別結果の公表について、橋下知事は府教委から提供されたデータを府情報公開条例に基づいて公�...

 

2008/10/09 15:46

学力テスト結果と日教組 [無党派日本人の本音]

 

&nbsp; 私は中山さんの失言?と麻生さん、小沢さんとマスコミで中山さんの失言問題を取り上げて、 今回の学力テストと日教組の組織率の関係などの事実を知りたいが(マスコミは)(特定団体、ここでは日教組の報道…