講道館の公式雑誌『柔道』の2008年9月号に掲載された私の記事の紹介を続けます。
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さて「ワシントン柔道クラブ」の特色の一つは会員たちの多様性だといえる。
アメリカ社会の実にさまざまな職業分野や年齢の男女が集まってくる。
全米レベルの試合でも活躍してきたメンバーでは、ロイ・イングラー五段は最高裁判所にかかる訴訟案件を専門に扱う弁護士、トム・カウフマン三段はコンピューター企業の幹部技師、アンドレアス・ブラント三段は救急医学専門の医師、ジム・スターニク三段は建築家、アービン・ブランドン二段は民間の警護スペシャリスト、女性ではフラン・バール五段が元国務省外交官、レイチェル・フリードリッヒ三段が国防総省の現職の幹部職員などなど、である。
やはり首都地域ならではの社会とのつながりなのだ。
段位を省略しての初段クラスや茶帯、青帯について述べるならば、首都地区で殺人事件専門の連邦検事だったマーク・キャロル、ジョージワシントン大学教授のエイモス・ゲルブ、ジョージタウン大学医学部の女性救急医のキャシー・クランシー、最高裁の女性書記官のアンジェラ・オンケン、アメリカン航空のパイロットのエリック・スミスといった職業人として活躍するアメリカ人男女が定期的に練習に出てくる。
こうした社会人、職業人が二十代から三十代、四十代はもちろん五十代以上でも参加して、自分なりのペースで稽古ができる点がこのクラブの特徴なのである。
日本人として柔道に励み、なおアメリカ社会に柔道以外で接する筆者としては、社会のこれほどの中枢で働く多彩なアメリカ人男女が日本で生まれ育った柔道をこれほど熱心に稽古し、後述するように日本の柔道リーダーシップへの敬意をこれほど表するという現実はなんともうれしく、誇りに感じてしまう。
職業にはもちろん貴賎はないとはいえ、アメリカの官民の枢要部分で機能するエリート・プロフェッショナルたちが、それぞれ個人ベースで長い年月、柔道の稽古を続けているという状況は、日本の柔道関係者たちにもぜひ知らせたいところである。
学生も多彩である。
地元のジョージタウン大学の新入生、医学生、ジョージワシントン大学の国際関係大学院生、アメリカン大学の法科大学院学生ら、もちろん男女混合、そして黒人の多い有名校ハワード大学の大学院で心理学と法律をそれぞれ学ぶティファニー・ポークとジャスティン・ポークの姉弟は人種の多様性を改めて印象づける。
ハイスクールの生徒たちも数人くる。
首都には全米各地から種々の研修のために夏休みだけ、あるいは一年間だけ、という期間でやってくる若者たちも多い。
アメリカの政府機関や議会、研究所でインターンなどの短期、中期の研修をするというような若者たちである。
そのなかにすでに柔道を知っている人たちがいて、ワシントン柔道クラブの評判を聞いたり、インターネットで発見して、入門してくる。
つい最近では西海岸のスタンフォード大学を卒業した目の不自由な青年が連邦貿易委員会というところで研修を受けるためにワシントンに一年間、滞在する間、当クラブで稽古をした。
視力の弱い彼には多くのメンバーが文字どおり手取り足取りで熱心に指導をした。
だが同クラブの最大の人材源はやはり当のジョージタウン大学そのものである。
新しい学年や学期の始めにはクラブ側が数百人の新規学生を対象にJUDOの宣伝のチラシを配り、クラブ入会を呼びかける。
その結果、いつも数十人が入門してくる。
三ヶ月ほどの期間の終わりには通ってこなくなる学生も多いが、そのまま次の学期に数人から十数人が残るというケースも珍しくない。
(つづく)
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