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「靖国問題」が消えた?

2006/11/20 07:43

 

ハノイでのAPEC首脳会議は無事に19日に終わりました。
安倍首相は多国間の国際舞台への初めての登場で、実質、イメージともに顕著な外交成果をあげたといえるでしょう。
APEC自体は最近、無力になっていることは産経新聞にも書きましたが、その場を利用しての各国首脳間の顔あわせ、あるいは本来のAPECの主題の貿易とは関係のない、北朝鮮の核兵器開発など安保や政治のテーマを国際的に協議するには都合のよい機会となっています。

安倍首相の活動のハイライトの一つは中国胡錦濤主席との会談でした。
この会談で胡主席は「歴史」も「靖国」もまったく口にしなかかったというのです。この事実はニュースです。このところもう10年近くも、日中首脳会談では中国側は必ず、繰り返しますが、いつも必ず、日本の歴史認識、あるいは靖国問題を持ち出していたのです。
ところが胡氏はなにもいわなかった。

さて日中関係での「靖国」はたとえ瞬間的にせよ、消えたのか。
私はハノイでこのへんについて以下の記事を書きました。
すでにイザのニュースでも報じられていますが、改めて、ここに記載します。
  

靖国は消えたのか 

 【ハノイ古森義久

 18日の日中首脳会談は「歴史」がまったく語られなかった点で皮肉にも近年の日中関係の歴史に残る会合となった。懸案のはずの靖国も中国側からの言及はなく、いわゆる靖国問題が中国側の政治加工による外交戦略カードとしての要素が強いことを期せずして立証したといえそうだ。

 ハノイで開かれた安倍晋三首相と胡錦濤国家主席による首脳会談はアジア太平洋経済協力会議APEC)を利用し、しかも前回の会談からわずか6週間後という限定があったとはいえ、日中間の東シナ海問題、経済問題、核兵器問題から北朝鮮の核開発への対応まで広範なテーマを論じた。

だがこれまで日中関係を悪化させたと断じられた日本側の首相らの靖国神社参拝も、それと一体にされる日本側の歴史認識も、まったく論題とならなかった。

 日中首脳会談では少なくとも98年に当時の江沢民主席が来日して「歴史を鑑として未来に向かう」と日本側に訓示を垂れて以来、中国首脳は必ず「歴史」を語ってきた。もちろん日本側の歴史認識が不十分という批判である。以後も小泉政権の全期を通じて、日本側の親中派の「靖国のために日中首脳会談が開けず、日本は孤立している」というプロパガンダふう主張とは異なり、首脳会談は毎年、開かれてきた。  

胡主席になっても中国側は2005年までのすべての日中首脳会談で必ず「歴史」と「靖国」の両方を声高に告げてきた。

安倍首相がのぞんだ10月の会談でさえ例外ではない。

 ところが今回は両方とも消えたのだ。その間、日本側では安倍首相は靖国を曖昧にはしても、譲歩はみせていない。日本側の歴史認識も小泉政権時代と変わった証はない。となれば、中国側の自主的な判断で靖国や歴史を提起しないことにしたと考えるしかない。政治的な意図により対日折衝での靖国問題などは出すことも、引っ込めることも自由自在だという実態が裏づけられたといえよう。「13億の中国人民の感情が傷つけられたため」に中国政府としてはやむにやまれず、提起するほかない、という構図とはまったく異なるわけだ。

 もし日本の首相の靖国参拝中国人民が傷つき、自国政府を動かすというのならば、水が泉のように自然にわき出して、日本側にもぶつけられるということだろう。ところが今回の会談は中国側が実は水道の蛇口をひねるように人為的に水を出したり、止めたり、水量を調節したり、という実態を期せずして証したといえそうだ。

 中国側はこんごも政治や外交の計算次第で靖国問題を持ち出してはくるだろう。だがその提起が自国にとってなんの得もなく損ばかりだと基本の判断を下せば、日中関係でのいわゆる靖国問題というのは終わるのである。靖国参拝は本来、日本の外交の一貫でも、中国側への意思表示でもないからだ。

     

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コメント(21)

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2006/11/20 09:09

Commented by daguma さん

古森様はじめまして。如何に自民の一部や野党・マスコミの発言がいい加減なのかがわかるすばらしい記事だと思います。
右翼と呼ばれている人たちのほうが、正直であり反省すべきは反省していると思います。
朝日なども一度は過去について正直に検証すべきだと思います。

 
 

2006/11/20 09:38

Commented by へぼゴルファー さん

古森様こんにちは

靖国問題は中国にとって利益となるから存在しており、利益とならなければ存在しない、と言うことだと思いますが、

日本は、そんなくだらないことにわざわざ付き合って、蜂の巣をつついたような大騒ぎを繰り返してきたのですから、馬鹿馬鹿しいにもほどがありますよね。

鼻から内政干渉であると決め付けていたほうが、どんなに解決が早かったのか?と想像を巡らせてしまいます。

ところで、中国にとって利益にならないとは、もう少し各論で知っておきたいです。
まず、靖国をちらつかせることによる朝貢はもはや無いでしょうが、東アジアの覇権とか地位競争について中国があきらめたとはとても思えません。

 
 

2006/11/20 10:17

Commented by thinking さん

 正にズバリ正解、と言うべき、鋭い指摘だと思います。 古森さんならではの、明察であり洞察だと思います。

 
 

2006/11/20 17:56

Commented by hoihoihoi さん

今朝、本紙で拝読いたしました。感動しました。靖国問題っていったいなんだったんだ、国内で騒いでいた方々は反省して謝罪してもらいたいと。簡単明瞭に書いてあるのに内容は深くかつ分かりやすい。一読理解。実にいい記事を読ませていただき幸いです。

 
 

2006/11/20 21:03

Commented by tomo2006 さん

古森さん、こんにちは。そして先日のコメント欄でのお答え、誠にありがとうございました。

古森さんの記事を読み、日本の自称親中派の媚中派が、いかに中国のイメージを歪め日本を貶めてきたか、「常に歴史問題を」なんておかしなことが明記された文選から離れた中国の外交姿勢からは、現在の中国のトップが相当自信を持っていることを感じさせられました。

APECの記事も読ませていただきました。なるほどとも思ったのですが、同時に「あれっ、APECってそもそもそういう非力でどうしょうもないものだったような」とも感じました。

小生などは、今回のも開かれた地域主義とコンセンサス重視、WTO頑張ろうとか研究していきましょうなんて感じで、APECらしいと言えばなんともAPECらしいぬるいお湯加減。もしもEUのようにがちっとしたものだとすぐ立ちゆかなくなり、この地域で共同体なんて不可能なんだろうなぁとしみじみ感じていたのですが、古森さんの記事を読んで、ちょっと見立てが甘かったかなとも思いました。

そういえば、ブッシュ大統領提案はアメリカ民主党の保護主義が黙っちゃいないと思うのですが、どうなんでしょうか。

古森さん、これからも素晴らしい記事を読ませてください。『凛とした日本』も読ませていただきたいと思います。

 
 

2006/11/20 23:13

Commented by 古森義久 さん

daguma様
ようこそ、です。
靖国問題はこんご中国がどうするか、中国政府の対日関連の人たちは産経新聞を熱心に読んでいてくれるので、こちらがああいう見解を率直に書くと、またそれなりにおもしろく対応してくるかもしれません。

 
 

2006/11/20 23:15

Commented by 古森義久 さん

へぼゴルファー様

中国は日本を揺さぶり、弱めるという基本戦略は予見しうる将来、ずっと変えないでしょうね。その戦略のための最有力の武器が「靖国」であり、「歴史」のわけですが、もしそれが武器たりえないとなれば、また別の方法を考えてくるでしょうね。

 
 

2006/11/21 00:20

Commented by yoshi18 さん

古森さま

初めてお便りします。
おっしゃるように「靖国参拝は本来、日本の外交の一環でも、中国側への意思表示でもない」のです。
純然たる国内問題です。
首相が参拝するべきかどうか、国内で色々議論すればよいのです。行きたくない議員はいかなければ良いのです。
私は首相は当然参拝するべきだと思います。
そして靖国神社で自分が参拝した理由を世界に向かってどうどうと、述べれば良いのです。
中国は18年間二桁の軍事費の拡大をしていますが、日本の首相が「平和への祈り」大々的にをされると、その理由がなくなって、困るのではないかと思います。
(つまりそのために今まで、反対と言い続けてきたのではないでしょうか)
多分中国はまた色々な事を言ってくるでしょうが(日本の国論が2分するような問題を)、日本にも言いたい事は沢山ありますのであらかじめ準備しておく事が必要でしょう。
逆に中国の内政干渉的な事にもクレームをつけたらどうでしょうか。
中国の教科書の内容が偏向しているので修正せよ。
反日教育をやめよ。
東シナ海のガス田開発をやめよ。
2桁の軍拡はまさに軍国主義であるからやめよ。
チッベトから手を引け。
領海侵犯をするな。
沢山あるのに今まではあまり何も言ってきませんでした。
大いに議論してこそ、相互理解は生まれるものです。

 
 

2006/11/21 00:22

Commented by kikori2660 さん

はじめまして。記事を本紙でも拝見しましたが、今回の記事はあまりにデタラメだと思います。

中国側の自主的な判断で靖国や歴史を提起しないことにしたと考えるしかない」というのはどう考えても嘘で、安倍首相が「靖国参拝をしない」という約束を裏で取り交わして、日中首脳会談をやってもらった、というのが真実ではないですか?私は単なる一介の会社員であり、政治の素人に過ぎませんが、古森様を始め、様々な保守系言論人が「日本外交の勝利だ!」と声を揃えて合唱する産経の紙面に非常に危惧を覚えます。事実を事実と認め、立ち向かっていく気概のようなものを今の安倍政権に感じられないのです。

靖国参拝程度の事を成し遂げる事の出来ない政権が、拉致問題の解決や憲法改正など出来るわけもありません。

 
 

2006/11/21 07:07

Commented by みなとの石松 さん

お餅風のお米の登場か。
政治のスタンスもあるが、ブレは全く感じられない。
靖國の本質を中国が知る由もなく、単なる膵臓ガンだ。
気概を感じられない?、どこに眼をつけておられるか。
靖國参拝程度という見方では、到底そのレベルでしか観れない。

 
 

2006/11/21 11:16

Commented by ohrakusai さん

今回ハノイでの、日中首脳会談に関する他紙の記事によれば、「歴史問題」に関する言及は有り、また歴史問題に関する両国の学者によるワーキンググループの設置も決まったようですので、「靖国問題(?)は消えた」という認識ではなく、靖国問題がたとえ有ろうが無かろうが、両国首脳は会談するのだという認識が正しいのではないでしょうか。日本側の「歴史問題」「靖国問題」に対する対応に問題があり、日中の対話が進まないなどという、安っぽい論説記事、脊髄反射記事を垂れ流してきた新聞、一部政治解説屋は笑止千万です。

それと、10日付けJT紙にGC氏の反論が掲載されております。
例により、レッテル貼りから議論をスタートし、一部事実誤認(無知)、論点の勝手なすりかえがあるようです。

 
 

2006/11/21 11:18

Commented by ohrakusai さん

失礼しました、20日付けです。

 
 

2006/11/21 20:44

Commented by buryar9551 さん

ohrakusai様

Ideological laundry unfurled
By GREGORY CLARK
ttp://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/eo20061120gc.html

こちらの記事ですね。彼は日本に長く住んで、郵政民営化問題で“刺客”を送り込まれて泣き言を繰り返していた自民党造反組と同じような“甘えの構造”にどっぷり浸かっているのではないでしょうか。

 
 

2006/11/25 02:01

Commented by 古森義久 さん

thinking様

ありがとうございます。
靖国問題は来年、また必ず再燃するでしょうから、それに備えるためにも、思考の整理整頓がいまの段階でも必要だと思っています。

 
 

2006/11/25 02:05

Commented by 古森義久 さん

hoihoihoi様
これからの論議に備えて、事実関係の正確な把握と、理論の構築が大切だと自戒をこめて、意識しています。

 
 

2006/11/25 02:10

Commented by 古森義久 さん

tomo2006様

私もAPECの存在自体や意義を否定するわけではありません。
ただし93年の第一回APEC首脳会議(場所はシアトル、日本の首相は細川氏でしたね)から取材をしていて、当初の貿易自由化に関する目標がなにひとつ達成されず、目標がますます焦点ぼけになっていく実態をよくみてきたつもりです。
しかし貿易の自由化以外の目的(首脳同士の交流は非経済の安保などの緊急課題への取り組み)にはそれなりに意味があり、それなりの実績を達成してきたと思います。

 
 

2006/11/25 02:16

Commented by 古森義久 さん

yoshi18様

ようこそ。
私も中国側の日本に関する教育や報道、展示に対して、日本側として発言すべきだと思っています。
中国側の日本に関する激しい偏向と事実からの離反については自書の『日中再考』などで詳しく報告してきました。
日本が日本についての中国での教育のあり方に意見を述べることは「内政干渉」とは異なると思います。
日本での靖国参拝や靖国のあり方は「中国に関すること」とは異なるともいえます。

 
 

2006/11/25 02:28

Commented by 古森義久 さん

kikori2660様

ご意見をありがとうございます。

安倍首相が「靖国参拝をしない」という約束を中国側とすでに裏で取り交わしたということが、もし真実であれば、私の書いた記事へのご批判も甘んじて受けますが、このことが「真実」だという証拠はありません。それとも私がまったく関知しないだけで、どこかに証拠が存在するのでしょうか(皮肉ではなく、もしそうなら是非とも真実を知りたいと思うのです)。
また安倍首相はそうした「約束」はしていないと私は思います。したという証拠がない以上、また本人もそのような約束などしていないと言明している(微妙な形で)以上、「約束をした」という断定はできないと思います。
しかし約束があっても、なくても日中首脳会談で「靖国」や「歴史」を持ち出すか否かは中国側の自主的な判断の結果でしょう。日本側から持ち出してくれ、とか、やめてくれ、と頼んでも、効果はないでしょうし、そんな依頼も意味がありません。中国が「靖国」や「歴史」を持ち出すことには、いつも日本を揺さぶり、弱める狙いがあるーーーこの点も間違いでしょうか。
しかし私は今回と前回の日中会談の開催が「日本外交の勝利」だとは思っていません。中国側が客観情勢の判断により、「靖国」などでは柔軟に出た方が得だと一時的に決めただけだと思います。
「気概」については私も同感です。

 
 

2006/11/25 02:31

Commented by 古森義久 さん

みなとの石松様

おもしろいコメントをありがとうございます。

 
 

2006/11/25 02:45

Commented by 古森義久 さん

ohrakusai様

ハノイでの日中首脳会談で「歴史研究」が論じられたことは知っていましたが、この件は前回の北京での日中首脳会談で合意された「歴史合同研究」の手続き上の打ち合わせ継続の範疇でした。従来の中国が提起する「歴史問題」とは異なります。この「歴史問題」つまり中国側が問題視する日本側の「歴史認識」はまったく出なかった、ということです。

日本の首相が靖国に参拝しようがしまいが、日中首脳会談は開かれる、開かれるべき、という点には私もまったく賛成です。というよりそれこそが私の年来の主張です。

クラーク氏の投稿についてのいち早いお知らせ、ありがとうございました。私自身が対応したことはこのブログでみてくだされば、ありがたいです。

 
 

2006/11/25 02:48

Commented by 古森義久 さん

buryrar9551様

クラーク氏の言を「甘えの構造」に喩えられる点、なるほどと思いました。

 
 
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