オバマ氏の大統領当選でアメリカの保守主義が否定された、というような解釈もあるようです。
でも本当にそうなのか。
アメリカの保守陣営や保守主義の現状、展望について書きました。
【緯度経度】ワシントン・古森義久 「拒否」されてない保守
保守主義の冬の時代の始まりなのだろうか。
米国の大統領選挙でリベラル志向の民主党バラク・オバマ候補が、保守派に支持された共和党ジョン・マケイン候補に圧勝し、保守陣営では保守主義や共和党の将来を占う議論が盛んになってきた。
「いまや保守主義者たちは一時亡命をしたうえで反撃をはからねばならない」
「保守派はいまレーガン主義の出発点に戻り、テントを広げて再編を目指すべきだ」
全米で毎週、数千万単位の聴取者を持つラジオのトーク番組の保守派人気ホスト、ラッシュ・リムボウ氏やショーン・ハナディ氏は声をからして、保守陣営の再強化と再団結を訴える。
いまや保守系の政治番組にも、リベラル派の連邦議員から通信法の「公正ドクトリン」という規定をたてに圧力がかかりそうなのだ。
保守主義とは政府の民間への介入を最小限に抑える「小さな政府」を推し、減税とともに自由競争や自助努力を重視する。
対外的には軍事力による抑止や自由民主主義に基づく外交を重んじる。
社会的には個人の自由、伝統的な価値観の保持を唱える。
実際の政治の場では共和党の政策や思想とほぼ合致する。
しかし米国の社会思潮でも国政の舞台でも、戦前から戦後の長い期間、「大きな政府」のリベラリズムが主流だった。
連邦議会の上下両院で一貫して民主党が圧倒的多数を占めていたこともその結果だった。
だが1980年のロナルド・レーガン氏の大統領当選でその構図は劇的に逆転した。
92年に民主党のビル・クリントン氏が大統領に当選したが、その政策はリベラリズムをぐっと薄めていた。
しかも94年の中間選挙では上下両院で共和党保守派が議席を大幅に増やして新たな「保守革命」を宣言した。
その保守の基調が80年以来、初めて大きくほころびたのが2006年の中間選挙だった。
そして今回の大統領選挙はさらに保守主義と共和党の後退を印象づけたのだった。
その結果、選挙の直後から保守の魂の模索が始まったのである。
「いまの保守主義の後退はブッシュ政権が政府の民間への介入や支出を拡大して『大きな政府』を実行し、保守の原則から逸脱したことにも大きな原因があるため、保守全体としてはブッシュ政権の退陣後にはまた息を吹き返せる」
草の根保守運動のゴッドファーザーと呼ばれる長老活動家のリチャード・ビグリー氏が米紙に語っていた。
同氏は保守派が疎外され、孤立していた1960年代半ばから草の根保守運動の組織づくりに努めた伝説的な人物である。
世論調査を専門とする共和党活動家のウィット・アイヤーズ氏は「保守派には新しいリーダーたちが必要だ」と述べ、今後の希望の星として真っ先にあげたのが副大統領候補のサラ・ペイリン・アラスカ州知事だった。
民主党や主要メディアには袋だたきにあったとはいえ、ペイリン氏への保守派の支持と信頼は絶大なのだという。
アイヤーズ氏やビグリー氏が保守派の指導者として他に推奨したのは、37歳のインド系米国人のボビー・ジンダル・ルイジアナ州知事、47歳のティム・ポーレンティ・ミネソタ州知事、52歳のチャーリー・クリスト・フロリダ州知事などだった。
アイヤーズ氏らが保守派、共和党の明るい展望を強調するのは、大統領選挙で全体票の46%強の5680万票がマケイン候補に投じられたことや、投票時の全米出口調査では自分を保守主義者とみなすと答えた人が全体の34%と、リベラル派だと答えた22%を大きく上回ったことも理由のようだった。
だから保守の思想や政策自体が米国民多数派から完全に拒否されたわけではない、というのである。
だが、その行方は野党に回る共和党側がオバマ政権にどこまで効果的に挑めるのかに一重にかかっている。


by きんちゃん
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