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朝日新聞 若宮論説主幹の北方領土放棄論の詐術

2006/11/29 15:18

 

朝日新聞の若宮啓文論説主幹が11月27日の同紙のコラムで「北方領土」というタイトルで書いた一文は北方領土4島のうち国後、択捉の両島はもう放棄すべきだという主張を明確に打ち出しています。しかもこの一年という期限を切って残りの二島だけの返還を求めようというのです。

二島返還論というのも一つの主張ではあるでしょう。しかし若宮氏のこの一文はその主張を表明するプロセスで日本側では二島返還論がいかにも一貫して本流の正論であったかのような虚像を描いている点が詐術に近いトリックを感じさせます。

若宮氏といえば、竹島韓国に渡してしまおうと提唱したことで広く知られる人物です。その人がこんどは方領土も二島を放棄しようというのです。この「一貫性」にはなにか薄気味悪い感じさえ覚えてしまいます。

若宮氏はこのコラムをモスクワでの「日本ロシア・フォーラム」に参加しての見聞を基に書いています。そのなかでは1855年の日露和親条約にも触れて、「この条約で国境が決まり、北方四島が日本領と決められた」と書き、四島が本来は日本領であることは認めているようです。

周知のように日本の固有領土の歯舞、色丹、国後、択捉の四島は日本がポツダム宣言を受諾し、無条件降伏の意を表明した1945年8月15日の第二次大戦終結のあと、
ソ連が軍隊を侵攻させ、不当に占拠して、いまにいたっています。不当な占拠であることが最も明白な日本の領土です。日本の歴代政権はみなその返還を当然ながら四島一括で求めてきました。二島だけの返還を求めた政権はありません。

しかし若宮氏は以下のように書くのです。

「あのとき(1956年10月の日ソ共同宣言調印による国交の回復のとき)ソ連は、歯舞、色丹の二島返還でけりをつけようとした。フルシチョフ氏の決断だったのだが、日本が応じなかったのは、米国が『二島で妥協したら沖縄を還さない』と強く圧力をかけたためだ。米ソ冷戦のもと、日ソの接近を警戒していた。
 もうひとつ、日ソ交渉に『四島』の枠をはめたのは、保守合同から間もない自民党内だった。鳩山氏に政権を奪われた吉田茂氏に連なる旧自由党系の議員らが米国に呼応して二島返還に猛反対していた」

以上の部分だけでも若宮氏の記述には詐術のような虚構があります。箇条書きで指摘しましょう。なおこの部分に関しては私は当時の状況を詳しく調査し、研究した専門家二人の見解をも聞きました。

①日本政府が当時、二島返還に応じなかった理由は『米国の圧力』だけだったように若宮氏は書くが、当時の日本政府は四島返還を自明のように考え、二島だけに傾く兆しはツユほどもなかった。若宮氏の主張に従えば、もし『米国の圧力』がなければ、日本政府は二島返還に応じたことになるが、日本側での当時の交渉につながる長いプロセスでも二島返還論は出ていなかった。
②「二島で妥協したら沖縄を還さない」という米国の圧力は,
もし事実ならば、日本の外交史を大きく書き換えるほどの大事件なのに、具体的な証拠も論拠も若宮氏は示していない。北方領土問題を研究してきた専門家たちも「そのような具体的な米国の圧力についてはまったく聞いたことがない」と述べている。事実なら大ニュースとして朝日新聞は報道すべきだろう。
③「日ソ交渉に『四島』の枠をはめた」という若宮氏の表現も事実をゆがめている。北方領土は終始一貫して、四島であり、四島こそが本来の自然の姿であり、それはなんの「枠」でもない。むしろ二島の方が人為的、政治的な「枠」をはめた産物なのだ。

このように若宮氏は日本側の北方領土返還はいかにも「二島」が主流の要求であり、「四島」はそれをゆがめた「枠」とか「米国の圧力」に屈した結果であるかのように書いているのです。コラムの終わりの部分でも、日本側ではあくまでいまも四島返還が公式の主流の要求である事実を無視して、二島返還あるいは四島以下の返還こそが多数派の、正しい意見であるかのような、ゆがんだ構図を描いています。

しかも若宮氏はプーチン大統領の任期が切れるあと一年余りの間にこの北方領土問題を二島(あるいは二島プラス)返還で解決することを提唱しています。
外交交渉でなにかを求める側が自ら交渉に期限をつけることほど愚かなアプローチはないでしょう。
しかも日本固有の領土を切り売りして、目先の解決を達しようというのです。これではロシアの主張そのもののようです。領土というのは主権国家の尊厳にかかわる基本の案件です。軽く半分だけを削って、手打ちにしようという性格の事柄ではありません。
ロシアの国内政情も、国際情勢もなおどう変わるか、わかりません。年月をかけ、国内の団結を保って、四島返還を粘り強く求めていくことこそ、わが日本にとっての正しい道でしょう。

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コメント(17)

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2006/11/29 18:53

Commented by ハルカミル さん

北方領土問題に絡み、北海道新聞でこのような記事を見て呆れかえりました。

「北方領土に向け人道支援船出発 根室港」
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20061128&j=0026&k=200611289062

ロシアは原油の輸出で景気が良いようですし、他に援助すべき国はいくらでもあるはず。「ロシア支援室」なるものが外務省にあるのも驚きです。

こんな援助が北方領土返還の役に立つとでも言うのでしょうか。ロシアは日本の漁民を射殺したにも関らず、外務省ロシアに貢ぎ続けるのを止めない。これでは見くびられて当然です。

「売国無罪」の外務省、面目躍如だなと思いました。

 
 

2006/11/29 23:48

Commented by 古森義久 さん

ハルミカル様

確かに呆れかえるような記事が多いですね。
しかしその一方、そうして状況への警鐘を鳴らした論文もありました。
読売新聞11月23日の「論点」とい欄に載った「北方領土問題 日本の対応、立て直しを」という寄稿論文です。
外務省ロシア専門家の兵藤長雄氏が書いています。
外務省でもいろいろあるということなのか、この兵藤氏が少数派ということなのか。
ぜひ一読をお奨めします。

 
 

2006/11/29 23:55

Commented by 古森義久 さん

訂正です
上記のハルミカル様とあるのは、ハルカミル様のまちがいです。

 
 

2006/11/30 00:01

Commented by buryar9551 さん

朝日新聞は、2005年元旦の社説で日露戦争を評価していましたが、今度は北方領土放棄論ですか。エマニュエル・トッド氏の日本核武装論を掲載したり、一貫性がまったくありませんね。東アジア共同体実現のためなら何でもありということでしょうか。

北方領土紛争は欠陥外交の好例
ttp://www.gregoryclark.net/jtmarch05.html
松本はまた、この方針転換が、ちょうど重光と、これまた(松本によると)日本との領土問題解決を一切阻止したがっていたコチコチの反共主義ダレスとのワシントンにおける会談と時を同じくしていることにも注目している。(公開された国務省資料は、ダレスが早くも1955年1月時点で、領土問題解決を阻止するために重光に圧力をかけるように指示したことを裏付ける)

ところでこちらはグレゴリー・クラーク氏が以前The Japan Timesに書いたコラムの一部ですが、若宮氏の主張と妙に似通っています。

 
 

2006/11/30 00:07

Commented by kiyoicho さん

こんばんは。
古森さんの指摘される2番目。
>「二島で妥協したら沖縄を還さない」という米国の圧力は…
朝日新聞や民主党お得意のガセでしょう。実際あったかも知れないけど、実際の証拠の史料を示せなければアウトです。
若宮啓文論説主幹は、考え方の多少偏った新聞社の最高幹部ではなく、最高の「デマゴーグ」なのだと思います。「竹島(独島)問題」での彼の言動を見れば明らかです。この方が「北方領土」ですから、自ずから結果は知れます。

北方領土の問題を考える際、忘れてならないのは「南樺太」のことです。
吉田茂総理のサンフランシスコ講和会議での演説を以下に。
http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/HoppouShiryou/19510907.S1J.html
吉田茂総理の認識の若干の誤りを是正しつつも、樺太(南樺太)を含めた北方領土問題を考えなければならないと思います。吉田演説は樺太問題を全世界に提示した。堂々とした演説だと思います。
今、彼の孫の麻生太郎氏が外務大臣でがんばっています。期待したいです。
古森さんの産經の記事や、今日のようなブログへのエントリーがほんとうに大切だと思います。
失礼しました。

 
 

2006/11/30 00:26

Commented by 古森義久 さん

buryar9551様

アメリカが日本に圧力をかけたという点ですが、当時の外務省の西村熊雄条約局長が国務長官のダレスから「占領された国が領土返還を求めるのはけしからん」というようなことを言われたという話は知られています。しかし当時の日本政府が二島返還に応じる状態にあり、それがアメリカの圧力でダメになった、という若宮説とはまったく異なるわけです。

 
 

2006/11/30 00:28

Commented by 古森義久 さん

kiyoicho様

南樺太に関するご指摘、ありがとうございます。

 
 

2006/11/30 14:03

Commented by 小龍景光 さん

古森様

多くの方が感じていて、大人の対応で口になさらないだけなのかもしれませんが、私は朝日新聞は我が国における外国の出先機関、もっと平たく言えば単なる売国奴であると思っています。

たぶん、朝日の記者の一人ひとりには優秀な方も、使命感に溢れた方もいらっしゃるのでしょう。しかし、朝日という組織に入った瞬間から思想的にはがんじがらめになっている。それが嫌なら朝日を飛び出さなくてはならないということなのでしょう。

朝日の主張は我が国の国益や主権を削り取ろうという意思が働いているとしか思えないのです。
それでも言論の自由なのでしょうか?報道の自由と言うのはそのようなものなのでしょうか?

個人が誰かを誹謗中傷すれば名誉毀損罪に問われます。報道機関が国を誹謗中傷してもなんの責任も問われないのでしょうか?

自由には義務と責任が伴うはずです。どうして報道機関にだけは自由が認められるだけという、摩訶不思議な状況が生まれているのでしょうか?

 
 

2006/11/30 15:52

Commented by 古森義久 さん

小龍景光様

私も著書の「朝日新聞の大研究」(井沢元彦氏、稲垣武彦氏との共著)などで述べてきましたが、朝日新聞は「日本」という概念がどうも好きではないと思わされる実例があまりに多いようです。

 
 

2006/12/01 11:30

Commented by buryar9551 さん

古森様

ありがとうございます。クラーク氏はほかにも『モスクワにかける虹:日ソ国交回復秘録』(松本俊一、朝日新聞社)を
参考にしてあれこれ日本の対応を批判しています。

小龍景光様

難しい問題ですね。自由主義の概念からすると国を誹謗中傷することも許されるべきで、彼らの意見に反対なら公の場で
批判するか、名誉毀損の訴訟を起こすべきなのかもしれません。
例えば、ヒトラーの『わが闘争』を一般の書店で販売してもいいかどうか、国によって違いがありますしね。

 
 

2006/12/01 14:23

Commented by 古森義久 さん

buryar9551様

オーストラリア人のクラーク氏がなぜ日本の領土問題に之ほど批判的な論評を加えるのか、大きなお世話だといいたくるのですがーー

 
 

2006/12/01 21:22

Commented by mochizuki さん

(続き)
③ 北千島{占守島(しゅむしゅとう;露名シュムシュ島)・阿頼度島(あらいどとう;露名アトラソヴァ島)・幌筵島(ぱらむしるとう/ほろむしろとう;露名パラムシル島)・志林規島(しりんきとう;露名アンツィフェロヴァ島)}および、中部千島{磨勘留島(まかんるとう;露名マカンルシ島)・温禰古丹島(おんねこたんとう:露名オネコタン島)・春牟古丹島(はりむこたんとう;露名ハリムコタン島)・越渇磨島(えかるまとう;露名エカルマ島)・知林古丹島(ちりんこたんとう;露名チリンコタン島)・捨子古丹島(しゃすこたん島;露名シアシュコタン島)・雷公計島(らいこけ島;露名ライコケ島)・松輪島(まつわ島/まつあ島;露名マトゥア島)・羅処和島(らすつあ島/らしょわ島;露名ラスシュア島)・摺手岩(スレドネワ島)・ウシシル島(宇志知島、;露名ウシシル島)、ケトイ島(計吐夷島、;露名ケトイ島)}シムシル島(新知島、;露名シムシル島)、ブロトン島(武魯頓島、;露名ブロウトナ島)、チリホイ島(知理保以島;露名チェルポイ島)、チリホイ南島(知理保以南島;露名ブラット・チェルポエフ島)、ウルップ島(得撫島;露名ウループ島)および、南千島の{択捉島(えとろふとう・;露名イトゥループ島)と国後島(くなしりとう;露名クナシル島)}などは、「サンフランシスコ講和条約」の第2条(C)で、すべての権利、権原及び請求権を放棄しているが、「日ソ共同宣言」では“平和条約の締結に関する交渉を継続すること”が同意されているはずであるが、産経新聞の古森義久論説委員と朝日新聞の若宮啓文論説主幹との間で意見が異なるようだが、理由が不明確だから夫々独自の論説とういよりも俗説の類であろう。

 
 

2006/12/02 23:20

Commented by みなとの石松 さん

“「相・性・体・力・作・因・縁・果・報・本末究竟で表現する十如是」の因子・条件が全く異なるのだから”
仏教のある経典を読経する際に「ことば」にするものを出しても、果たして現代語として文脈上、意味が通じますかな。

 
 

2006/12/04 08:19

Commented by みなとの石松 さん

ま、コメントを載せるならば、特殊用語ではなく、一般人が解かる言葉で、という単純な意味なんですがねぇ。

 
 

2006/12/04 09:55

Commented by 古森義久 さん

みなとの石松様

読んでも意味のわからない文章には呆然としますね。

 
 

2006/12/06 20:06

Commented by teruo さん

上記の書き込みを読んでいるとこれは田中真紀子氏には無理だ、到底理解できないとと確信した。河野一郎にも無理だね。鈴木宗男さんにも無理だ。ロシアとの距離を十分保った上で長期戦でロシア外交は初めから仕切り直すのがが良いようだ

 
 

2006/12/07 02:40

Commented by 古森義久 さん

teruo様

田中真紀子氏には理解は無理だとご意見にはまったく賛成です。

 
 
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2006/11/29 20:19

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【社説1/01】  ネットにはさらに激しい言葉が" 中国などの神経を逆なでする「反省できない日本」 【社説1/05】  「小泉首相、こんなに理解力なく身勝手とは」「殆どの新聞が靖国参拝中止求めてる」 【コラム 1/10】 …

 

2006/11/30 13:13

Another possible target of Mr. Komori's attack? [生きること、学ぶこと]

 

Abduction hard line self-defeating: expert ↑今朝はこんな記事が目に留まりました。 追記 ところで、古森氏はご自分のブログで、先日来私が「日本の核武装」という題で紹介していた記事と同じ朝日新聞の若宮さん…

 

2006/12/01 12:25

週刊金曜日主催「癌をネタした珍劇」 [極東メモ]

 

◇特集 悠仁親王は「猿のぬいぐるみ」! 「陛下のガン」も笑いのネタにした「皇室中傷」芝居 その瞬間、あまりの下劣さに観客も凍りついた。 11月19日、日曜日。 東京の日比谷公会堂で開かれた『週刊金曜日』主催…

 

2006/12/01 19:33

★ 発売日は決まったんですが……、 ★ [★ 反中マンガを、作っています!…]

 

 版元さんに聞いたら、『印刷部数が少ないので、中小の書店には入らない所が多いだろう』という事でした……(泣)。  確実に入手されたい、という方には、アマゾンでの注文をお勧めいたします。 ↓ http://www.am…

 

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北方領土 [機械仕掛けの中の人など(ry]

 

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