今回の北朝鮮のミサイル発射に際して、日米同盟、そして日米共同のミサイル防衛はどう機能したのか、あるいはしなかったのか。
その点について以下の記事を産経新聞に書きました。
一日、遅れですが、改めてここに載せます。
【ミサイルと安保】ワシントン駐在編集特別委員・
古森義久
2009年04月06日 産経新聞 東京朝刊 1面

■日米同盟の「新たな真実」
北朝鮮のミサイル発射は日本の国家安全保障の基本にいくつかの深刻な課題を突きつけた。
今回の危機で抑止の存在感を薄めた日米同盟の機能に関しては、「真実の時」をもたらしたとさえいえる。
北朝鮮は、日米両国だけでなく
ロシア、中国の反対を無視する形で
米国本土にまで届きうる長距離ミサイルを打ち上げた。
それは1998年の
テポドン1号の発射、2006年の
テポドン2号の発射と合わせ、
北朝鮮が国際社会に挑み、北東アジアでの対外脅威を増す意図を再度、誇示した。
そうした能力の顕示はそれだけで北東アジアの戦略的安定を崩していく。
北朝鮮とは拉致問題などで国家利害が衝突する日本にとっては、いつでも弾道ミサイルを撃ち込めるという北側の軍事能力の誇示は重大な威嚇となる。
日本側の国家意思をねじ曲げ、抑えつける効果を持つわけだ。
本来、この種の軍事威嚇を無効にすべき日米同盟の抑止力も、国際社会の連帯による「多国間外交」も、北朝鮮の無法行動を阻めなかった点に、日本の安全保障への重大な教訓がある。
ゲーツ米国防長官は3月末のテレビとの会見で、北朝鮮のミサイルが
米国本土に向かってこない限り「迎撃の計画はない」と断言した。
同じミサイルが日本領土に照準を合わせて発射されても迎撃対象としないという意味となる。
文字通りに解釈すれば、日米安保条約の米国の責務に反する重大発言だった。
長官の姿勢は北朝鮮の発射宣言へのオバマ政権の対応の異様なソフトさだけでなく、日米同盟を発射の抑止手段として前面に出さない基本とも合致していた。
ここ数年、日米共同の
ミサイル防衛はまさに同盟の協力強化の中核であり、今回こそ両国がミサイル迎撃でぴたりと歩調を合わせる共同防衛態勢を示して抑止とすることが自然な帰結のはずだった。
だが、
北朝鮮が発射を予告して以来、オバマ政権側では、同盟に基づく対応よりも、もっぱら多国間協力の効用が説かれた。
背景には、同政権の「二国間よりも多国間」という基本姿勢とともに、
オバマ大統領自身の
ミサイル防衛への消極姿勢があるといえる。
この構図を広げていくと、日本にとっては「北朝鮮のミサイル脅威には
米国に必ずしも依存できない」という深刻な新シナリオさえ浮かびあがる。
歴代の同盟関係とは異なる状態である。
日本としては、オバマ政権下で日米同盟の新たな真実が姿を現したのかと、探索をせねばならない時だろう。
一方、日本側でも今回、日米共同
ミサイル防衛の政策論での懸案となっていた
集団的自衛権の行使禁止について触れることがなかった。
現在の憲法解釈では日本はどんな場合でも日本領土に向かってくるミサイルしか迎撃できない。
日本の領土や領海のすぐ外で日本防衛のために行動する米軍の部隊や基地に向けられたミサイルを撃てば、
集団的自衛権の行使となるから、撃つことはできない。
他方、米軍は日本領土だけを撃つミサイルも迎撃できるし、せねばならない。
この不均衡を是正することが日米共同
ミサイル防衛の実効発揮の大前提になるという主張は、
ブッシュ前米政権では盛んだった。
だが、日米いずれの側でも今回、この課題は提起されなかった。
麻生太郎首相とすれば、この緊急時に日米一体の日本防衛をより確固にするためにも「この種のミサイル防衛では
集団的自衛権行使の権利を留保する」と解禁宣言する好機だった。
だがそれもなく、米側の日米同盟を希薄にする流れを広くする結果となった。
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