以下のような記事を書きました。
「ブッシュ政権の外交政策を意のままに動かしたとされるネオコンなどという存在はそもそもなかった」
「ネオコン外交政策と称されるのは左翼からみて右寄りと映る政策への批判にすぎず、実体のない陰謀説のようなものだ」
こんな挑発的な言葉がワシントンの研究機関「ニクソン・センター」の外交政策論議の場で最近、述べられた。
発信者はネオコンの指導者とされたリチャード・パール氏である。
パール氏は保守系現実派とされる国際安全保障学者で、レーガン政権では国防次官補、ブッシュ政権では国防長官顧問に等しい国防政策委員長を務めた。
イラクのフセイン政権打倒に関してもその作戦断行を強力に主張した論客だった。
オバマ政権となったいま、ネオコン論議も意味がないように映るかもしれない。
だがワシントンではブッシュ政権の対外政策、とくにイラクの平定と民主化の適否を判断するには、このネオコン論議はまだまだ現代性を発揮するのだ。
ネオコンというのは周知のようにネオコンサーバティブ、つまり新保守主義者の略である。
この課題で明記されねばならないのは1980年代には自他ともにネオコンサーバティブと認める一群の人物たちが存在したことだ。
当時の民主党リベラル派だった上院議員のヘンリー・ジャクソン氏や政治学者のアービン・クリストル氏らは、外交政策に関しては民主党カーター大統領の姿勢を軟弱すぎるとしてソ連に対する強固な政策を打ち出し、自らネオコンサーバティズムを主唱した。
「ネオ」という語には転向という意味がにじんでいた。
だがブッシュ政権の外交を牛耳ったとされる21世紀のネオコンは、この前者とは時代も内容も異なる別のグループだった。
そもそも80年代の新保守主義者たちはあくまでネオコンサーバティブというフルの呼称で呼ばれたが、ネオコンという略称にはあざけりの響きがある。
ネオコンとされた当事者たちもパール氏の例のようにその呼称を無意味なレッテルと排し、自らを単なる保守主義者とかレーガン保守主義者と呼んでいた。
オバマ政権の現在、このネオコン論議が再燃したのはパール氏が政治評論雑誌「ナショナル・インテレスト」の最近号にブッシュ政権のイラク政策についての長文の論文を発表し、「ネオコンがその政策をすべて動かしたという主張には根拠がない」と述べたことが契機だった。
パール氏は次のように書いていた。
「ブッシュ政権のフセイン政権打倒の政策は、中東の石油確保やイスラエルの利益拡大、民主主義の武力での押しつけなどを秘密の野望目的として活動する数人のネオコンのイデオローグによって作られ、推進されたという主張はまったくの虚構だ」
パール氏はこの種の主張を大々的に取り上げたメディアの一例としてニューヨーク・タイムズ、バニティー・フェア、ニューヨーカー、ガーディアンなどの米英の新聞、雑誌をあげていた。
確かにこれらのメディアはブッシュ政権のイラク政策を全面的に非難し、責をネオコンに帰し、その政策は「間違いだから失敗する」と断言していた。
だがこの点ではイラクの現状をいまみることが重要だろう。
7日、イラクを訪問したオバマ大統領は現地の米軍将兵に次のように語った。
「サダム(フセイン)の排除、暴力の減少、国内の安定、選挙の協力など、あなた方は与えられた任務のすべてに関してイラク側に民主主義国家として自力で立つ機会を与える結果となった。このことは傑出した偉業であり、米国民も感謝している」
ネオコンの虚実をめぐる論議はなお続くにせよ、米国がイラクであげた成果がオバマ大統領の指摘どおりとするならば、ネオコンこそが米国民の感謝を受けるべきだという皮肉な理屈も成り立ってくる。


by josh-88
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